硬いものが噛みにくい状態を、上顎総義歯とインプラント併用部分義歯で改善した症例
「食事がうまく噛めない」とお悩みだった60代女性に対し、上顎総義歯と、1本のインプラントを併用した下顎部分義歯によって、噛み合わせ全体を再構成した症例です。
すべてをインプラントで治療するのではなく、手術範囲や治療期間、費用などの負担を考慮し、必要な範囲にインプラントを使用しました。
治療後は食事を噛みやすくなり、患者さまからは「硬いものもしっかりすりつぶして食べられるようになった」とのお言葉をいただきました。
症例概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年齢・性別 | 60代・女性 |
| 主訴 | 食事がうまく噛めない |
| 初診時の状態 | 上顎の歯列が前方に位置し、上下の歯が十分に噛み合っていない状態 |
| 主な問題 | 咬合平面が乱れ、部分的な治療だけでは十分な改善が難しかった |
| 治療内容 | 上顎総義歯、下顎の補綴処置、右下臼歯部のインプラント1本、インプラント併用部分義歯 |
| 治療期間 | 約1年 |
| 費用 | 上下精密義歯800,000円(税込880,000円)、インプラント1本500,000円(税込550,000円)※その他の治療費は別途 |
| 治療後 | 食事や硬いものを噛みやすくなり、歯並びと口元の見た目も改善 |
食事がうまく噛めないことを主訴に来院
患者さまは「食事がうまく噛めない」とのお悩みで来院されました。
初診時は、上顎の歯列が前方に位置しており、噛んだときに上下の歯が十分に接触していませんでした。また、歯の高さや並びの基準となる咬合平面にも乱れがあり、食べ物を効率よく噛み砕くことが難しい状態でした。
不足した歯だけを部分的に補うのではなく、お口全体の噛み合わせを再構成する必要があると判断しました。

すべてをインプラントで治療しなかった理由
失われた歯を補う方法として、すべてをインプラントで治療する方法も選択肢の一つです。
しかし、この方法では必要なインプラントの本数や手術範囲が大きくなり、治療期間・費用・身体的な負担も増えることが予想されました。
一方、義歯だけで治療した場合には、患者さまのお口の状態によっては、下顎部分義歯の十分な維持や支持を得にくい可能性がありました。
そこで今回は、多数のインプラントを使用するのではなく、右下臼歯部に1本のインプラントを使用し、下顎部分義歯の維持と支持を補う治療計画をご提案しました。
インプラントと精密義歯を組み合わせることで、手術範囲を必要な範囲に抑えながら、義歯の安定と噛み合わせの改善を目指しました。
治療工程
STEP1 精密検査と噛み合わせの診査
口腔内写真やレントゲンなどを用いて、残っている歯、顎の骨、歯ぐき、上下の噛み合わせを確認しました。
診査の結果、上顎の歯列が前方に位置し、上下の歯が十分に噛み合っていないことに加え、咬合平面にも乱れが認められました。


STEP2 治療方法の比較と治療計画の立案
インプラントを中心とした治療、義歯による治療、インプラントと義歯を組み合わせる治療について、それぞれの特徴を患者さまへ説明しました。
患者さまの身体的負担、治療期間、費用などを考慮し、上顎は総義歯、下顎は必要な補綴処置を行ったうえで、インプラントを併用した部分義歯で治療する方針としました。

STEP3 下顎残存歯の補綴前処置
下顎に残っている歯へ補綴処置を行い、部分義歯を支えやすく、上下の歯が適切に噛み合う状態へ整えました。
最終的な義歯だけを製作するのではなく、残存歯と義歯を一体として考えながら、噛み合わせを再構成しています。


STEP4 治療用義歯による噛み合わせの確認
治療用義歯を製作し、噛み合わせの高さ、咬合平面、人工歯の位置、歯並び、口元の見え方を確認しました。
治療用義歯を使用することで、いきなり最終義歯を製作するのではなく、実際に使用した際の噛みやすさや見た目を確認しながら調整できます。

STEP5 右下臼歯部へのインプラント治療
下顎部分義歯の維持と支持を補う目的で、右下臼歯部に1本のインプラントを使用しました。
多数のインプラントを使用するのではなく、義歯の安定に必要と判断した範囲に限定しています。

STEP6 上下精密義歯の製作
治療用義歯で確認した噛み合わせや歯並びをもとに、上顎総義歯と下顎部分義歯を製作しました。
硬いものを噛む際に力をかけやすい位置へ人工歯を排列し、上下の歯が適切に接触するよう調整しました。
機能面だけでなく、前方に出て見えていた上顎の歯並びにも配慮し、口元が自然に見えるよう仕上げています。

STEP7 装着後の噛み合わせ調整
完成した義歯を装着した後も、痛みの有無、義歯の安定性、食事の際の噛みやすさを確認しながら調整を行いました。
義歯は完成して終わりではなく、実際の使用状況に合わせて調整し、定期的に管理していくことが重要です。
治療前後の変化
治療前は上下の歯が十分に噛み合っておらず、食事を噛み砕くことが難しい状態でした。
治療後は、上下の噛み合わせと咬合平面が整い、食事を噛みやすくなりました。患者さまからは「硬いものもしっかりすりつぶして食べられるようになった」とのお言葉をいただいています。
また、前方に出て見えていた上顎の歯並びも整い、機能面だけでなく、口元の見た目も自然になりました。

治療期間・費用
治療期間:約1年
上下精密義歯:800,000円(税込880,000円)
インプラント1本:500,000円(税込550,000円)
※下顎の補綴処置、検査、その他必要な治療の費用は別途必要です。
※お口の状態や治療内容によって、治療期間・回数・費用は異なります。
リスク・注意点
- 義歯は取り外して清掃するなど、毎日のお手入れが必要です。
- 義歯の装着後に、痛みや違和感が生じる場合があります。
- 使用開始後に、噛み合わせや義歯の安定性について複数回の調整が必要になることがあります。
- 顎の骨や歯ぐきの状態は時間とともに変化するため、義歯の修理・調整・再製作が必要になる場合があります。
- インプラント治療には外科手術が必要であり、術後に痛み・腫れ・出血などが生じる場合があります。
- インプラント周囲炎を防ぐため、毎日の清掃と定期的なメインテナンスが必要です。
- 治療結果や治療期間には個人差があります。
入れ歯とインプラントのどちらにするか迷っている方へ

失った歯を補う方法は、「すべてをインプラントにする」か「義歯だけで治療する」かの二択とは限りません。
お口の状態によっては、必要な範囲にインプラントを使用し、精密義歯と組み合わせることで、手術範囲や身体的な負担を抑えながら、義歯の安定性を高められる可能性があります。
池尻歯科医院では、残っている歯や顎の骨、噛み合わせ、患者さまのご希望を確認したうえで、複数の選択肢をご説明しています。
すべての方に同じ治療方法が適しているわけではありません。入れ歯が安定しない、食事が噛みにくい、インプラント治療の負担が気になるという方は、一度ご相談ください。
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