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なぜ歯科医師は「歯を削らない治療」を推奨するのか?

最近、多くの歯科医師が「なるべく歯を削らない治療」を推奨しています。、極論を言えば、歯を削ったからといって命に関わることはほぼありません。それにもかかわらず、なぜ歯科医師は削らない治療を推奨するのでしょうか?

それは、単に「歯を守る」という目的だけでなく、経済的な負担の軽減や、患者の人生の質(QOL)に大きく関わるからです。今回は、歯を削らずに残すメリットについて、さまざまな角度から考えてみます。

① 歯を削ると経済的負担が増える

虫歯治療で歯を削ると、詰め物や被せ物の費用がかかります。保険診療でも1本あたり数千円、自費治療なら数万円~数十万円かかることもあります。しかし、問題はそれだけではありません。

詰め物や被せ物は永久的に持つわけではなく、数年~十数年で交換が必要になります。そのたびに治療費がかかり、さらに治療を繰り返すほど歯は弱くなり、最終的には抜歯→インプラントや入れ歯へと移行する可能性が高くなります。

例えば、若い頃に1本の歯を削り、数回詰め替えを行い、最終的に抜歯→インプラントになったとすると、生涯で数十万円以上のコストがかかることになります。逆に、最初から削らずに済めば、こうした出費を抑えることができます。

② 健康面でのメリットが大きい

歯は削るたびに寿命が短くなります。小さな虫歯で削ったとしても、その後の再発リスクが高まり、さらに削る→最終的に神経を取る→歯が折れる→抜歯という流れになることがよくあります。

また、歯が少なくなると噛む力が弱まり、消化器官への負担が増えます。噛む回数が減ることで、脳への刺激も減り、認知症のリスクが上がることもわかっています。つまり、「歯を守ること」は「全身の健康を守ること」につながるのです。

③ 歯科通院の負担が減る

歯を削る治療をすると、必然的に歯科医院に通う回数が増えます。例えば、虫歯治療だけでなく、詰め物の調整や、補綴物の交換、抜歯後の処置、インプラントや入れ歯の調整など、長期間にわたって歯科通院が必要になることもあります。

これが仕事や家庭の都合に影響を与え、結果的に「歯医者に通うために時間を取られる」という状況に陥ります。もし、削らずに済めば、こうした時間的・精神的な負担を減らすことができます。

④ 予防の意識が高まる

「歯を削れば治る」と思ってしまうと、虫歯予防への意識が低くなりがちです。しかし、「できるだけ削らないためには、そもそも虫歯にならないことが重要」と理解できれば、患者自身が日々のセルフケアを見直すきっかけになります。

フロスや歯間ブラシの使用、フッ素の活用、定期的なメインテナンスを習慣化することで、虫歯の発生を最小限に抑えることができます。

⑤ 歯を削らない選択肢を増やす

現在の歯科医療では、「虫歯になったら削る」という考え方から、「虫歯でもできるだけ削らずに治す」という方向に進んでいます。
たとえば、
高濃度フッ素の応用(初期虫歯を再石灰化) 

樹脂やセメントを使ったMI(最小侵襲治療)

まとめ:歯を削らないことは「人生の質」を守ること

確かに、歯を削ること自体が直接的に命に関わることはありません。しかし、削ることで経済的負担が増え、健康リスクが高まり、さらに歯科医院に通う回数が増えることで、人生の大切な時間を失うことにもつながります。

だからこそ、歯科医師は「なるべく削らない治療」を推奨するのです。削らなくて済むなら、それに越したことはありません。

歯を守ることは、自分の時間やお金、そして健康を守ることにもつながる。そんな意識を持って、日々のケアを大切にしていきましょう。

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